世界選手権、私なりの感想
2009年 04月 02日
さて今週はフィギュネタです。
すごーく長いので興味のない方は読みとばしちゃってください。
この週末はフィギュアの世界選手権が行なわれました。
フィギュアのシーズンは10月後半からグランプリシリーズが始まり、いくつか試合をした後どこの国も12月末から1月半ばまでに国内選手権が行なわれます。
国内選手権で上位に進めなかった選手はここでシーズン終了。
しかしこの国内選手権で世界選手権に選出された選手はここからが大一番。
どの選手もこの世界選手権で良い結果を出そうと調子を上げていき気合い満々で試合会場に乗り込んできます。
しかし今回の世界選手権、熱い戦いは試合前のオフリンクで始まりました。
まずキムヨナが「四大陸の時にはジャンプにはいろうとしたら妨害がひどかった」と韓国のテレビ局SBSの取材で話します。
そしてそれをSBSは「日本人選手」と特定しさらにニュースの中でキムヨナとぶつかりそうになった選手にモザイクをかけて報道しました。犯罪者扱い!?
(でもそれは四大陸選手権でキムヨナとニアミスしかけたカナダ人選手だったり、別の試合での日本人選手だったのです。悪意ある編集でしょう。)
それを見たキムヨナファンはYouTubeで日本人選手(特に真央ちゃん、ミキティー)をたたく悪意ある動画をアップしました。でも実はこの動画は編集の具合で彼女達がキムヨナに妨害しているかのように作られたもので、もっとカメラをひいて周りの状況を見てみると明らかにキムヨナ側の方が分が悪いのです。)
その悪意ある日本人たたきの動画対し日本から反論の動画がぞくぞく出てきてもうYouTubeもフィギュアの掲示板もそれはそれは荒れまくりました。
その騒動から日本スケート連盟に抗議が殺到して重い腰をあげた連盟は韓国スケート連盟に今回の騒動について説明を要請、国際スケート連盟にも報告をしました。
ま、その後はキムヨナの「別に日本人選手なんて言ってないもん、関係ないもん」の弁明を受けて何となくはっきりしないまま騒動はなんとなく解決しました。
しかしこのキムヨナ騒動を吹っ飛ばす様な戦いがまたしても試合前のオフリンクでありました。
男子の2006年世界王者フランスのブライアンジュベールが今期評価が高いカナダの新鋭パトリック.チャンに対して
「男子のチャンピオンは4回転も跳べないようなヤツがなるべきではない。(チャンへ)4回転入れてみろよ。そうすればどれだけプログラムをまとめるのが難しくなるかわかるから」と攻撃すれば、チャンは、「プログラムはトータルのパッケージだと考えるべき。ジャンプだけではなく、他の要素も大事」と返す。
あぁさすが「永遠の不良少年」ジュベール言ってしまいました。(彼はアクの強い選手なので好き嫌いが分かれますが、私は怪我や病気を乗り越えてそれでもなお4回転にこだわる姿はまさに「王者」と呼ぶにふさわしい選手だと思っています)
これは今の採点法によって難しい事に挑戦する選手(ジュベール)よりも1つ難度を落として無難にまとめる選手達の方が強い、そしてその恩恵を一番受けているチャンに対する挑戦状です。
反論の中でチャンはジュベールを負け犬呼ばわりしてしまい
「まだワールドの表彰台にさえ乗っていない選手が世界王者に対してなんと無礼な事を......」ともう大変な騒ぎでした。
ただこれに関して私はチャンは売られた喧嘩を買っただけの事でもともとはジュベールが仕掛けたんだからしょうがないと思います。
ていうかもともとマナー違反を犯したのはジュベールでしょう。
ただ問題はこの後。
調子に乗ったチャンは歴代の偉大なオリンピックチャンピオン達について「あの頃よりも僕たちの方がずっと難しい事をやっている」などと言ってしまったのです。
確かに今の採点法によって選手はプログラムの初めから最後まで色んな制約があり求められる技の難度も高くなっているのは事実なのですが、偉大なチャンピオン達は4回転黄金時代を勝ち抜いた最高の選手達です。
それをまだ4回転さえ跳ばない、跳ぼうともしていないチャンがメディアの前でそういう発言をしてしまい私は激しい怒りを感じました。
高難度のジャンプを入れてプログラムをまとめる事は本当に本当に難しいのです。
なので今期日本人男子選手は4回転を入れる事によってどうしても最後までプログラムを上手にまとめる事ができないのです。
そういう事があっての男子シングル。
ショートでは4回転-3回転のコンビネーションジャンプを入れたジュベールがジャンプが乱れたにも関わらずノーミスのチャンよりも高い得点で首位。
フリーはチャンの方が先に演技を終えました。ジャンプミスはあったものの素晴しい演技でした。チャンのスケーティング技術は今の男子の中でも最高でしょう。
氷に張り付く様な流れるスケート。素晴しいとしか言いようがありません。
この騒動の中でもこれだけの演技を見せられるチャンは間違いなく本物でしょう。
その次はアメリカのエバン.ライサチェック。彼はショートもフリーもノーミス。
会場中が総立ちの素晴しい演技でした。今までなかなかトップになれなかったライサチェック、この大会は「神が降りてきた」とも言える様な最高の演技でした。
この時点でライサチェック1位、チャン2位。
最終滑走者はジュベール。彼の滑りで勝負は決まります。
最初の4回転ジャンプ素晴しい出来でした。途中ジャンプミスはありましたがスピン、ステップと素晴しい演技で会場も興奮状態です。
「ライサチェックかジュベールどちらかが勝つだろう。でもこのままいくときっと4回転を決めたジュベールだろう」という流れでした。
しかし演技の最後の最後。
ジュベールは一番難度の低いなんと2回点半のジャンプ(女子でもあまり失敗しない安全パイのジャンプです)を失敗してしまったのです。
着地を失敗したというよりももしかしたら降りた所のリンクに穴があいていたとかそういうものではないかなぁと私は勝手に想像してしまいます。
それだけジュベールのこけ方は失敗ジャンプのそれとは少し違っていました。
演技残すところ30秒で勝利の女神はジュベールからそっぽを向いてしまったのです。つかみかけた王者の座が手からこぼれ落ちていきました。
結果は
優勝エバン.ライサチェック(USA)
2位パトリック.チャン(CAN)
3位ブライアンジュベール(FRA)
でした。
去年に引き続き男子シングルチャンピオンは4回転ジャンプ無しで勝ってしまいました。ただこれは一時的なもので今後は男子はまた「4回転ジャンプの時代」がやって来ると思います。
だってフィギュアは芸術性が必要なもののやはりスポーツ。
誰よりも1つ高い所に抜け出そうとすると高難度ジャンプに挑戦するのは自然な流れだと思いますし、やはり4回転ジャンプは男子シングルの華です。
チャンも来年以降は4回転ジャンプをプログラムに入れるようです。
彼が今後どういう選手になっていくのかすごく楽しみです。「そんなに甘くないと思うわよ!」と意地悪気味に.......ですが。
そしてなにより私は言いたい。
「男は黙って4回転」
